治すのではなく、治る【嘔吐・下痢】
こどもは、すぐ吐きます。
食べ過ぎても吐くし、胃腸かぜでも吐くし、ウンチがつまっても吐くし、熱が上がった、というだけでも吐きます。
私が小児科医になりたての頃は、診察中にこどもたちによく、ゲボッ!とズボンにプレゼントされたものです。
今では、「くるかな?!」と思ったら、サッ!とさりげなく身をかわす術をマスターしました。
こどもの吐く原因の中でよくあるのは、胃腸かぜでしょう。
おなかの中にウィルスや悪い細菌が入ったとき、人間のからだはそれを胃から追い出そうとします。
これが嘔吐です。
それでも、腸にまで降りてしまった場合に、今度は便をゆるくして回数を増やして下から追い出そうとします。
これが下痢です。
ですから、こういった症状のときには、あまりおくすりは必要ありません。
吐き気止めのおくすり(ナウゼリンなど)は、せっかく外に病原体を追い出そうとしているのを無理やり止めてしまうことになりますし、赤ちゃんに使うとけいれんを起こすこともあるので注意が必要です。
下痢止めのおくすり(タンナルビン、アドソルビンなど)も、せっかく外に病原体を追い出そうとしているのをムリヤリ止めてしまうことになります。
一部の下痢止め(ロペミンなど)には、強い副作用があり、最近子供には使用禁止になったものもあります。
なお、抗生剤は一般の胃腸かぜに使っても効果はなく、かえって腸内細菌(いつもからだにいて、いろいろ助けてくれる善玉菌)を殺してしまい、逆効果のこともあります。
食中毒などのごく一部の細菌性の胃腸炎には、効くこともありますが、かえって悪化することもあるため、使うのには慎重でなければいけません。